早くも東日本大震災から6年が経ちます。
当時、どうしても納期に追われる仕事があり、アトリエで黙々と柄を染めていました。菊の柄を染めていたことをはっきりと覚えています。
自分の仕事は、被災地の方々にとって、急を要する助けには全くならないことを、とても悔しいような思いで、しかしそれでも目の前の生地を早く染めなくてはいけないという複雑な思いで過ごしていたことを思い出します。
着物は、今や生活必需品とは対極に位置しています。
震災当時、着物を着ているだけでも「不謹慎」と言われた人も多いくらいです。
しかし、それでも日本人の心の中にあるのが着物だと思い、日々自分なりに励んできました。
必需品でないのなら、少しでも多く心の充足に役立つ仕事をしようと、さらに真正面から着物と向き合うことを決意した訳です。
そして、最近になり、まさに被災地にお住まいの方からご注文をいただく機会があり、お作りさせていただいたところ、
「大好きな着物を着ることもままならない、辛い状況だったけど、また着ることができるようになって、本当に良かった。素敵な着物を染めていただいて、感謝してます。」
という、とても嬉しいお言葉を下さいまして、6年もの時間はかかったものの、ようやく自分も一つ役に立てたのだと、実感することができました。
今後、もし大きな災難に襲われることがあっても、自分の仕事に誇りを持ち、たとえ時間がかかっても、人の喜びになるよう努めたいと思います。
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